屋内で水耕栽培をしていた時の詳細な記憶

あの時、俺は舞い上がっていた。
故・安倍晋三(現・紫雲院殿政誉清浄晋寿大居士)(敬称略)が10万円をくれたのだ。
私のようなカスにとっては大金だった。

無駄な物も買ってしまった。
それが、水耕栽培用の品々である。
入れ物(ポットの役割)、水槽用のフィルター、酸素循環器、洗って再利用可能な土(のようなもの)、光源用ライト、ざっとこんな感じだ。
実際に行ってみた。

めんどくさい。

もっとスマートに出来ると思っていた。
水耕栽培なんて未来的な名前に踊らされた。

まず、フィルターと循環器を買うこと自体が誤算だった。
水耕栽培といっても水は腐る。
そのため、定期的に水を入れ替える必要があるという、当然の事を見逃してしまっていたのだ。
正直、この問題は、フィルターと循環器だけでどうにかなって良かったと思う。
この二つを使えなかったら、さらに後悔していただろう。

そして土、洗って再利用可能だって言っても、根を除去する必要がある。
これがまためんどくさい。
植物の根は力強く細かい。
さらに酸素循環器の影響で、通常の土で育てたときよりもパワーアップしているッ!

最後に光源用ライト。
結構高かった。
ライトは二つ買ったが、ラディッシュなどの小型野菜用ライトは、値段通りの働きをしてくれた。

もうひとつの大型ライトは完全に失敗だった。
根本的に光量が足りない。
更にひどいのが色がピンクだということだ。
もちろん家族にも笑われた。
夜になると、私の部屋からピンク色の光が漏れ出ているのだ。

変な奴で済めばまだマシだった。
なんかヤバいの育ててんじゃねえのか?と思われていそうで、びくびくしながら使用していた。
これは私の気のせいかもしれないが、大型ライトを使用し始めてからしばらくして、変なところに車が止まるようになった。
長時間、ちょうどこちらの部屋が見えるような位置にだ。
ということで、怖くなって水耕栽培自体をやめた。

水耕栽培の道具たちは今、部屋の隅で汚れたまま放置されている。
視界の隅に入る度に、微笑んだ安倍晋三の顔が、浮かんでは消えていくのであった。