後悔

人生には、いくつか取り返しのつかない分岐点がある。
深夜になると、私はよく「あの時こうしていたら」と過去を振り返る。
環境に由来する苦悩も確かにあった。だが、それを差し引いても、選択をやり直せば全く別の人生になっていたと思う。

私の分岐点は大きく三つある。
小学4年、中学1年、高校1年の頃だ。



小学4年生の時
私は文武両道で、周囲の大人からも同級生からも一目置かれる存在だった。
足も速く、勉強も常に満点、運動神経も抜群で鉄棒に長時間立って乗ることも出来るし、ゲームも一番上手かった。
今思い返すと心底くだらないが、子供たちの尊敬を集めるにはそれだけで十分だった。
先生には礼儀正しく振る舞ってみせ、クラスの仲介役とまとめ役も担っていたので信用もされていた。
そうして自分は特別な存在なんだと勘違いしていった。
その結果、周囲の大人は凡人のなれの果てで俺はこんな奴らとは違う、というように大人を見下すのが癖になっていった。
そして人生を決定づける選択肢が現れた。
私はそこで最悪の選択をした。
詳細を書く勇気はまだない。




中学1年の時
中学に入る頃には、その選択の影響で生活は崩れ始めていた。
今だから客観的に見れるが、逃避行動が最も激しかったのはこの期間だったと思う。
それでも当時は「今が楽しければいい」と思っていたし、大人への軽蔑も変わらなかった。
むしろ、以前より悪化していたのかもしれない。
深夜、たまに将来のことを考える時もあったが些細なものだった。




高校1年の時
今にして思えば、あれが最後のチャンスだった。
この頃にはもう、自分も他人も特別ではないと理解していた。
人は結局、人でしかない。
私も、他人も、どう足掻こうが似たような存在にしかなれないのだ、と結論付けた。
そこで再び、大きな選択肢が現れた。
私は迷った末に、投げ出すことを選んだ。
あの瞬間から、何事にも「どうでもいい」が勝つようになった。





現在
生きてもないし死んでもいない、ただここに存在しているだけ。
楽しい事ももちろんあるが、それには生きたいと思えるだけの力は無い。
辛い事もあるが、因果応報なので特に思う所はない。
暗い部屋で静寂に包まれながら、過去を振り返る夜がある。
死にたくなることもある。
だが、本当に死ねるほどの行動力もない。
まともな人生を歩み、成功した世界の自分を夢想してみたりもする。
それも、虚しさから最後は自嘲で終わる。
今はただ、無為に時間を消費し続け、時がすべてを連れ去ってくれることを願い続けている。



闇は得体が知れず相容れない、それでも相対的に苦痛の少ない隣人ではある。
光には精神を無理やり引きずり出される。
私にとって木漏れ日や月の光や霧でさえ慰めにはならない。
誰も来ない深海や深い森に潜むことが出来たらどんな気分なのだろう。



昔は「来世は渡り鳥になりたい」と考えたこともあった。
だが、それもやめた。
鳥は自由に見えて、結局は何か大きな力に縛られて飛んでいる。
星の重力とかそういったものではない、もっと根本的な何かに。


ならば、この世界のすべてを縛るその力から逃れる方法はあるのだろうか。
たぶん、そんなものはないのだろうね。