顔
まぶたの裏に長い季節が沈んでいる
口角のかたちに選び続けた道が残る
名を問う前にそこにはもう在る
表裏
静水は月を抱き、波紋ひとつなく円満を装う。
その光景は無垢の印象を帯び、見る者の疑念を鎮める。
然れど底泥は、触れられぬ深みにおいて重く沈み、自らの重力を忘れぬ。
昼の額は明るく掲げられ、夜の背は黙して語らず。
両者は背中合わせに立ち、同一の身に宿る。
やがて微風が水面を撫でれば、隠されしものは揺らぎ、映像は歪む。
その歪曲の瞬間こそ、内なる衡平が静かに姿を現す刻である。
無常
山嶺は悠久を装い、雲はその肩をかすめて過ぎる。
峻厳なる岩もまた、無数の風に撫でられ、やがて砂へと帰す。
その帰還は敗北にあらず。
形を解き、別の形へと参与する、大いなる連関の一節。
留まらぬことは、秩序の欠如ではない。
むしろ流転こそが、万象を均しく支える基調である。
無常とは崩落ではなく、生成の別名である。

